夏の終わりの告白
8月がそっと終わりを告げようとしている。
爽やかな風が時折頬を通り過ぎる。
放課後の理科室は、西日がまぶしく差し込んでいた。
実験用の器具が並ぶ棚に夕陽が反射し、ガラスのビーカーが小さな虹を作っている。
「ねぇ、山田くん」
実験レポートの後片付けをしていた僕の背中越しに、
クラスメイトの佐藤さんが声をかけてきた。
彼女は理科室の係として一緒に残っていた。
「なに?」
振り返ると、佐藤さんは窓際に立っていた。
夕陽に照らされた彼女の横顔が、まるで絵画のように美しい。
「私ね、来年から東京の大学に行くことになったの」
「え?」
突然の告白に、僕は手にしていたビーカーを置き忘れた。
「だから、言っておきたいことがあって」
彼女は少し俯いて、白衣のポケットに手を入れた。
少しぎこちない様子で彼女が口を開く。
「山田くんのこと、ずっと好きだった」
時が止まったような気がした。教室に漂う理科室特有の薬品の匂いも
窓の外から聞こえる部活の声も、すべてが遠くなる。
「僕も」
思わず口から言葉が零れる。
「私のことも好き?」
佐藤さんの目が大きく開かれた。
「うん、好きだよ」
照れくさそうに頷く僕に、佐藤さんは満面の笑みを浮かべた。
夕陽に照らされた彼女の笑顔は、この夏の終わりの最高の思い出になった。
窓の外では、夏の終わりを告げるように蝉が鳴いていた。
ビーカーに映る夕陽の光が、二人の間で小さな虹を描いている。この瞬間を、僕は一生忘れないだろう。
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